二組目は、テンナインのメンバー内では映画好きとしても有名な中嶋條治さん。
いつも素敵な写真を撮ってくださっているので、「お気に入りの写真」をお持ちいただき、テンナインやシネマイムについてたっぷり語っていただきました!
(以下 中:中嶋さん)
きっかけはデザインフェスタ
ーーまずはテンナインとの出会いについて教えてください。
中:あれは2014年の11月だったかな。僕は大学で映画コースを専攻していたんですが、3人しか生徒がいなくて。4年生の卒業制作ではドキュメンタリーを撮ることにしたんです。それに向けて、カメラに慣れないといけないからとカメラを持ち出して。丁度デザインフェスタが開催されていたので、撮りどころが沢山あるはずだと見込んで行きました。それで、たまたま見かけたのがテンナインさんだったんです。「なんだこれは」と。早速カメラを回して。それが最初の出会いです。
ーーへぇ〜! そんな背景があったとは! 撮ったものは卒業制作に使ったんですか?
中:撮ったものの、勝手に使うわけにはいかないなと思ったので、卒業制作には使用しませんでした。ただ、かなり面白かったので、数日後、撮った素材を試写室で同級生に見せたんですよね。「どうだ、面白いだろ」って言って(笑)。その出会いからは、デザフェスに行く楽しみはテンナインさんになりました。
ーーそんなに前から応援してくださっているとは…。ありがとうございます。いつも素敵な写真を撮ってくださってますよね。
中:数年前に転職して、実家の写真店で働き始めました。ビデオカメラの経験はありましたが、実は写真は素人の状態で。1年目の時なんて慣れてないからかなり疲弊してました。それで気分転換に、その仕事にも使っている高性能のカメラを持ち出して撮ったのが、この4枚の写真です。
ーーお持ちいただいた写真はアップが多いですが、全体を撮ったり、ポイントを絞ったり、作品によって注目する部分が違ったりなど、こだわった撮り方などあるんでしょうか?
中:実を言うと、これを撮っているときは何にも考えてないんですよね…と言うと語弊がありますが(笑)。このとき『シン・ゴジラ』を見たのが初めてで。初めは全体を見ておきたいから引き気味で、なんとなくパシャっと撮って。それで全体が分かった上で、「蒲田くん(ゴジラの第二形態)の顔すごかったな〜」「次はアップで撮ろう!」と決めてこのアップを撮りました。撮り方としては、カメラはマニュアルに設定して撮ってます。オートだとどうしてもシャッタースピードが遅くて、シネマイムの動きが早いとブレてしまうし、全体暗くなっちゃうんです。
ーーいやぁ、改めて見ても奇跡的な一枚ですよね。
中:よくこんな写真撮れたなって、自分でも思います。汗の感じも丁度よく恐怖を感じますよね。この写真は主宰の降井さんからも褒められました。メンバーの皆さんの反応はどうなんですか?
ーーそれはもう、とっても良いですよ! いつも漏れなく感動してます、みんな! それに、なかなか自分たちではこんなに寄りで撮るっていうことも難しいですし。どうしても全体を撮ってしまいがちですしね。
中:それなら良かったです。僕はどうしても撮りたいものを撮っていったら「顔」になってしまうんですよね。テンナインさんの魅力の一つはこの「顔」だと思っているので。持ってきた写真たちでいうと、『リング』の真田広之さんや、『シン・ゴジラ』の蒲田くんや閣僚たちだったり、『魔女の宅急便』のトンボだったり、それぞれの役になると、ちゃんと顔つきが変わっていて、すごいな〜って。なかなか…この蒲田くんの顔って、できないですよ(笑)。
ーーそれもこれも、やはり長きに渡りシネマイムを見続けて下さっているからこそ分かるのかな、とも思います。
映画畑にもシネマイムを!
――11月のライブでは、シネマイムの裾野を広げたいというのが目標にあるんですが。
中:正直、僕も苦戦してます。結構、周りにいる映画好きの仲間にテンナインを布教しているんですが、なかなかうまくいかないんです。
――そんなことまでして下さっていたんですか(笑)! 映画好きの方に勧めるのはなんだかハードルが高いです。
中:なぜ僕がテンナインを好きになったのかって、理由ははっきり分かっているんです。それは映画ファンで、さらに演劇をやっていたからです。実は僕、高校生のときは演劇部に所属していて。お芝居もしていたし、脚本も書いていたんです。中学の時に三谷幸喜さんの『笑の大学』を見て衝撃を受けて「演劇をやりたい!」「ワンシュチュエーションのコメディを絶対やりたい!」って演劇を始めたから。だからテンナインさんがぴったりハマったんですよね。
――なるほど〜! 好きなものを並べていったら、確かにテンナインに繋がる…!
中:演劇人は「映画なんて」っていう人がいて、映画人には「演劇なんて」っていう人もいて。なかなかそれを融合させるっていうのが、難しいんですよね。
――突きつめていればいるほど、頑ななイメージありますもんね。(もちろん、あくまで個人的な意見ですが。)映画好きなご友人に、テンナインのパフォーマンスを見せたりするんですか?
中:撮った動画はYouTubeなんかにアップしたりツイッターにあげたりしてますけどね。感想をもらったことはないんですよ。ただ、何度も言ってるから、さすがに何人かは「君がよく言うテンナインですか」って反応はあって。周知はされてます。
――シビアな反応ですね〜。
中:映画も演劇も両方好きっていう方にもっと見てもらえたら…僕がこれだけハマっているんだから、他にも沢山いるはずなんですよね。実際にいつもデザフェスに行くとテンナインのブースは盛況なんです。中には「なんだこれ?」って初めて見に来たであろう方もいたり、「待ってました!」とテンナイン目当てで来る方もいて。なので、僕は演目表をざっと見て、何度も見たことある作品ばかりの時は、ちょっと場所を譲ったりします(笑)。
ーー優しい!
中:あんまり何度も見ているとね、良いところ陣取っても悪いかな〜なんて。まぁあれだけ人が集まるってことは、やはりシネマイムって面白いんだなって思います。それに、テンナインメンバーの皆さんの魅力があるのは間違いないと思います。リピーターが多いじゃないですか。テンナインを見にデザフェス行く人って、結構いると思いますよ。僕を含めて。ツイッターでそう言うつぶやき、何件か見ました。
ーーすごい、そこまでチェックしてくださってる!!
中:僕としては、デザフェスとテンナインを見に行っている感覚ですから。
ーーデザフェスとテンナインが同等なんですね(笑)! もう光栄です!
ドキュメンタリーを撮りたい
中:さっき卒業制作のドキュメンタリーを撮るためにデザフェスに行ったって話をしたじゃないですか。実は、テンナインのドキュメンタリーを撮ろうかギリギリまで迷ってたんです。
ーーなんと!!!
中:その思いは今でも変わらないです。はっきり言うと、今テンナインさんのドキュメンタリーか、テンナインさんの本か、それを形にしたい気持ちがすごくあるんですよ。
ーーそれすごくないですか! 私、それ見たいです。それ、見たいです!(興奮して2回言っちゃいました。)
中:稽古場風景や、新作の制作過程から本番まで…とか。「情熱大陸」的な。ただ、僕は単純にテンナインが好きなので、主宰のさんの降井さんの哲学を無視してしまうかもしれませんが(笑)。個人的な作品を先日制作したところなので、本を作ることへのハードルが下がりましたから。7割は写真で、3割はメンバーのインタビューの本とか、ガチで作りたいですね。
好きがいっぱい
――今やお馴染みの演目となりましたが、『仁義なき戦い』は中嶋さんの熱い熱いリクエストがあって実現した作品ですよね。
中:本当に、よくやってくれたなって思います。あれくらいの作品が一本くらいあると、頭の固い映画ファンから「アニメばっかりやってる」ってバカにされないですむかなと思うんですよね。
――そこまで考えてリクエストしていただいていたとは…。
中:ただ、本当に欲を言えば、黒澤明監督作品とかをやって欲しいんです。『七人の侍』とか良いと思いますし。あえて「8月のラプソディ』とか…って自分で言いながら、いったいどうやってシネマイムにするんだろう?って感じがしますが。笑
――その「あれは一体どのシーンをどうやるんだろう?」っていうのも楽しみ何ですかね?
中:そうですね。『仁義なき〜』を観たときも、「あぁ、ちゃんと東映*からやったか〜」と。しかも、その後のやばいシーンはちゃんとカットされていて、シネマイムとして良い感じにまとめられているな〜と感じました。
*映画の冒頭に出る三角形の有名な配給ロゴマーク
――その『仁義なき戦い』以外で、どの作品が一番好きですか?
中:これが、いつも悩むところなんですが…。少なくとも、一番観た作品だったら『魔女宅』です。写真も沢山撮ってますが、初めて『魔女宅』を動画で撮ったものが個人的ベストテイクで、何度も見返してます。でもなぁ…一番かぁ。。。『魔女の宅急便』か、『となりのトトロ』か…。
いや、その二つも好きなんですが、あれだ!「紅の豚』です。大好きなんです! 最後の方で、ポルコ(豚)とカーチス(男)が殴り合うシーンで、顔がどんどん変形していくところなんか、初めて見た時ゲラゲラ笑っちゃって。もともと、あの映画が好きなんですけど、だからこそ「あぁ〜いいなぁ〜」って思って。なので、『紅の豚』が候補ですね。間違いなく好きなシネマイムです。あえて『エイリアン』とも言いたいですが、一番となると、『魔女宅』か『紅の豚』! 長編シネマイムだと、『エヴァンゲリオン 新劇場版序〜ヤシマ作戦〜』です。
ーーもう完全に知り尽くした回答ですよね。「長編だったら」って言葉がもう、シネマイム通です(笑)。
伝われ、シネマイムの魅力
ーーまだ見たことない人に伝えるとしたら…どんなキャッチコピーをつけますか?
中:そうですね〜。ジブリのキャッチコピーを書いた糸井重里さんを真似て…
「ハリウッド大作は、からだだけで表現できるのです。たぶん。」(『となりのトトロ』よりーーこのへんないきものは まだ日本にいるのです。たぶん。)
「無謀とは、こういうことさ。」(『紅の豚』よりーーカッコイイとは、こういうことさ。)
「好きなえいがが、できました。」(『耳をすませば』よりーー好きなひとが、できました。)
とかですかね。
ーーなるほど! 面白いですね〜! すごいな、よくすぐぽんぽん出てきますね(笑)。
これで興味を持ってもらえたら良いな〜(もっとありましたが、抜粋しました。)
まずはこれを見よ!
魔女宅の写真
ーーこれは必見!っていうシネマイムはどれですか?
中:基本的に「全部」って言いたいんですけど。テンナインの代名詞として見せるなら、絶対『魔女の宅急便』。それと『エイリアン』ですね。『魔女の宅急便』は、シネマイムでできうることをかなり盛り込んでいますよね。そして、そっくりそのままやるわけじゃなく、デフォルメもOKなんだよっていう意味で『エイリアン』。この二つを見れば、だいたいテンナインがやっているシネマイムっていうものが分かるのではないかと思います。あまり厳密にやっていない。ただ、やっていることはハードだなっていう印象です。
上級者向けは『仁義なき戦い』。ちゃんと『仁義なき戦い』を見ている人だからこそ分かることがある! どこでパフォーマンスするのかっていうのも考慮してシーンの配慮とか、制作者サイドの忖度が想像できるっていう。
ーーそんな裏側まで想像して楽しんでらっしゃるとは・・・何度も見にきてくださっているので、何度も同じ演目を見ていると思うんですがそれでも見たくなりますか?
中:新作があれば、もちろん見たいって思いますけど。気分としては、落語や歌舞伎と変わらないんです。同じ演目でも、毎回同じ配役ってわけじゃないですよね。それも楽しみの一つだと思います。ただ、やはり初めに見た時の印象が強くって。初めて『天空の城ラピュタ』を見たとき、シータ役の五ノ井さんにものすごい衝撃を受けて。それでシネマイムにハマったと言っても過言ではないんですよ。なので、五ノ井さんがいるのに、他のキャストが配役されてるのを見ると「違うんだよな〜」って思うこともあります(笑)。
ーーやはり、初めて見たときのイメージって強く残るんですね〜。
中:そうですね。他にも、荻山さんがいないときに、蒲田くんを五ノ井さんが演じていたこともありまして。五ノ井さんのも迫力があるんですけど、やはり違う。正直言って、荻山さんは蒲田くん顔なんですよ。あれは、誰にもできない。
ーー蒲田顔!(笑)長く見続けているからこその視点ですかね。
中:私のようなファンは特にわがままなので(笑)。あまり参考にならないと思いますけどね。もちろん、この人が良い!って思う方がそのイベントに参加していなかったり、辞めてしまっていたりとかはちゃんと理解してますよ。
あなたにとって、シネマイムとは?
ーーでは、最後に・・・中嶋さんにとってシネマイムとは・・・?
中:テンナインじゃないんですね?
ーーあ、もうそれは、シネマイム=テンナインと思っていただければと。
中:なんて言えば良いかなぁ…。「いつの間にか、好きになっていた」。ですかね。もう、やってることが面白いんで、見ているうちにだんだん贔屓になっていく。そのうち、どんな風に作っているのか見たいって欲が出てきて、稽古場に見学しに行ったりもしたし、ドキュメントとか本とか作りたいなとか、この人たちを被写体として撮るのが楽しいなと思えたんです。僕がハマりやすいからかもしれませんが、本当に、いつの間にか、好きになってました。
ーー素敵なお言葉、ありがとうございます!
あとがき
いかがでしたでしょうか。面白いことに、どちらも「初めて見たときのイメージ」が強く残っていらっしゃいました。出会うタイミングによって、受ける印象も違う、それがシネマイムの特徴なのかもしれません。シネマイムの楽しみ方は、人それぞれ。お二組ともご自身の環境の変化などと照らし合わせながら、シネマイム作品やテンナインの過去のイベントでの思い出を語っていたのが印象的でした。こうしてテンナインの活動が誰かの人生の一ページになっているって、とても素敵なことだなと思います。ご協力いただきました飯田ご夫婦、中嶋さん、どうもありがとうございました! あまりに盛り上がり、膨大な量になってしまったので紹介しきれず、編集でだいぶカットしましたが、シネマイムの魅力が少しでも伝わったら嬉しいです。
さて、まだ見たことのないあなたは、人生のいつ、どこでシネマイムに出会いますか?
映画の名シーンを、いま、目の前で・・・。
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